ゲンロン新芸術校 第6期 最終成果展I 『0地点から向かいます―「現代美術の再発明」の再設定』
開催詳細
日程
2021/2/27(土)~3/1(月)
展覧会名
ゲンロン新芸術校 第6期 最終成果展I
『0地点から向かいます―「現代美術の再発明」の再設定』
場所
ゲンロン五反田アトリエ 東京都品川区東五反田
(ゲンロンカフェ 東京都品川区西五反田 )
入場料
無料
展覧会ステイトメント
『0地点から向かいます―「現代美術の再発明」の再設定』
2020年7月に予定されていた東京オリンピックは、思いも掛けない出来事によって延期となった。本来なら私たちは、今頃オリンピック以後の世界で過ごしていたはずである。しかし、コロナ禍がその世界線への接続を断った。
それまで想像していた未来とはまるで異なる日々が訪れ、これまで考える必要のなかったあらゆる生活様式の再設定を余儀なくされた。
しかし、私たちは、元より自らを再設定するためにここに集ったはずだ。何者でもなかった自身をアーティストとして再設定する者、自身の問題を、あるいは制作行為を再設定する者……。自分自身のあり方を確かめるように、各々の理由で再設定を必要としていたのだ。思えば、新芸術校第6期のステートメントにはこう書かれていた。
思い出してほしい。そもそも現代美術とは、そんなくだらないゲームの外に出る自由を行使することから、はじまったのではなかったか。そして新芸術校は、出口のない分断のゲームから脱出し、現代美術を再発明するための場だったのである。(*1)
いま私たちは、そんなくだらないゲームになろうとしている現代美術から脱出するために、自分たち自身の制作行為の営みそのものから捉え直し、再設定するべきなのではないだろうか。 日本オリンピック委員会理事の山口香氏は、スポーツ界がトップレベルばかりに価値をおき、結果として勝利至上主義や体罰を生む土壌となったことを指摘した。そして、もし歌を「口ずさむ」ようなスポーツの楽しみ方がもっと根付いていたならば、オリンピックを勝敗の利益のためだけでなく、スポーツそのものを自分ごととして考えてくれたかもしれないと述べている(*2)。「口ずさむ」行為は、私たちの日々の中にも浸透し、アスリートであるとか、アーティストであるとか関係なく、存在している。なぜか心を強く惹き付けられ、なんとなく身体が動いてしまう行為……。紙にペンを走らせる行為、糸を編む行為、任意の場所まで歩き続ける行為、人によって様々である。
その営みには、生活と地続きであるがゆえの揺るぎない初期衝動があるはずだ。それこそが、私たち自身が再び行き着いてしまう原点である。そして、思い掛けない世界の再設定を求められたとしても、決して変わらぬ営みだと考える。
その営みはいつまでも続けることが可能だ。しかし真面目に取り組むほど袋小路に入ってしまい、成果は目に見えず、有用性と普遍性の狭間で苛まれることだろう。その狭間の先で目的地に行き着くことは、決してない。だが、重要なのは目的地に辿り着くことではなく、むしろその間を往来することの方ではないだろうか。
普遍的な営みを続けること、同時に有用性を求めてしまうこと。その狭間で往来し続ける私たちは、やがて苛まれ、息詰まっていくだろう。そんなとき、日課や日常の地続きである「口ずさむ」ような営みが、私たちに再び立ち還るべき場所であることを思い出させてくれると信じたい。誰しも、この場所から歩んで来たのだから。 私たちはその場所を「0(ゼロ)地点」と再設定する。この先たとえどのようなことが起ころうとも、いつでもここに立ち還り、そして再び、何度でも出発できるために。
堀江理人(通常課程) 鈴木祥平(通常課程) 金盛郁子(CL 課程)
(*1)ゲンロン新芸術校第6期のページに掲載されたステートメント『現代美術の再発明』から抜粋。(*2)朝日新聞2021年1月26日朝刊、日本オリンピック委員会理事の山口香氏へのインタビューより。(https://www.asahi.com/articles/ASP1R5V6YP1RUTQP016.html)